栄枯盛衰
音響機器大手のパイオニアが昨日の27日をもって、東京証券取引所1部を上場廃止となりました。
1938年に創業して約80年、様々な商品を世に出して多くの人たちに親しまれてきましたが、香港のファンド会社のもとに入ることになってしまいました。
パイオニアといえばオーディオコンポ、レーザーディスクプレーヤーなどの家庭用音響機器が有名でした。
しかし、他メーカーとの競合に破れ2015年には家庭用音響機器から撤退しました。
近年ではカーナビなどの車載機器に事業を集中していましたが、スマホがカーナビ代わりに使われることでカーナビ事業は芳しくない状況になっていました。
株式投資として考えてみる
パイオニアが自力再建もできないほどになる状況、私達は数年前までは想像できなかったと思います。
2016年春号の会社四季報を見ても業績見込みは変わらず、むしろ上向くになっています。
ここから3年後、上場廃止に追い込まれるなんて思いもよらなかったと思います。
むしろあの名門企業のパイオニアの株式が当時(2016年2月25日)、24,700円から購入できる、割安な株だと思われていたかもしれません。
次にパイオニアの株式市場の株価動向を見てみます。
※出典 読売新聞オンライン
1960~70年代のオーディオブーム、80年代のレーザーディスク人気で株価は上がり、1990年のGPS(衛星利用測位システム)搭載のカーナビ発売で株価は同年3月に6,880円までになりました。
1990年の世界の自動車の保有台数が6億台弱、将来はもっと増えることが予想されていました。
だから自動車に搭載するカーナビの需要も増え株価は上がると考え、ここで1千株購入したとします。
その額6,880,000円(6,880円✕1,000株)になります。
しかし上の表を見ての通り、1990年3月に株価が6,880円になってからはこの株価を超えることなく、29年後には株価は百分の一以下の65円になってしまいました。
この時にはもう株を売るしかありませんが金額は65,000円(65円✕1,000株)になります。
つまり6,735,000円(6,880,000円-65,000円)も損失したことになります。
ではどうすればよかったのか
株式投資をする上で損失をできるだけ小さく防ぐ対策は2つあります。
1.損切り
損切りというのは購入した株の株価がある一定の株価まで下がると、その時点で強制的に株を売却する方法です。
尚、ある一定の株価というのは、株を持っている人(株主)が自分で決めるものです。
損切りの基本的な考えとしては、株がある一定の株価まで下がったらもう二度と買価まで上がらないというものです。
例えば今回のパイオニアの場合、6,880円の株価が6,000円に下がった時点で損切りをしたとします。
その結果は880,000円{(6,880円-6,000円)✕1,000株}の損失で抑えられたということになります。
主に短期投資家の方が損切りを採用しています。
2.分散投資
分散投資とはある企業が倒産などで株が紙くず同然となっても、他の株でフォローするといった方法です。
6,880,000円をすべてパイオニアに投資するのではなく、例えば10の企業に分けて投資をします。
これを分散投資といい、パイオニアの株価が暴落しても他に投資した企業の株でフォローする方法を言います。
「分散投資」の考えとして有名な投資の格言に「卵は一つのカゴに盛るな」というものがあります。
たくさんの卵(お金)を一つのカゴ(一つの投資先)に盛った(投資した)時、カゴが落ちたら(倒産したら)、卵(お金)は全滅してしまいます。
だから一つのカゴではなく、複数のカゴ(複数の投資先)に分けて卵を守れば良いということです。
主に長期投資家の方やインデックス投資をする方が分散投資を採用しています。
まとめ
誰もが将来の株価は当てることが出来ないことから、絶対に株式投資で儲かるとは言うことが出来ません。
何故なら倒産しそうで株価が低迷している企業が、優秀な経営者が突如現れて業績が急上昇して株価が上がることがあるかもしれません。
一方、業績がよく株価が毎日上がっている企業が、一つの不祥事で株価が急落することも考えられます。
だから一つまたは少数の投資先に投資を集中するのではなく、多くの投資先に投資するか、インデックス投資による分散投資がいいと思います。
損切りも損失を抑える良い方法だとは思いますが、次の投資で利益が出るとは限らないのが欠点です。
今回のパイオニアの上場廃止であらためて株式投資、分散投資の大切さを感じました。
ただし分散投資といえど必ず利益が出る、損はしないとは言えません。
損失を出す恐れもありますので株式投資はご自身の責任で判断してください。